メロンクリームソーダ

Twitter @_imatter__

初恋の人は不登校

恋愛と無縁すぎてこのまま仙人になると公言している私の初恋は実は幼稚園の年中だった。Tくん。

 

Tくんは学年1足が速くてモテモテだった。正直当時もそんなイケメンだとは思ってなかったけど、幼少期にモテるのはだいたい運動神経が良い奴である。彼は運動ができる上にとても優しい人だった。神か。

仲の良かった2つ上の従姉妹に「お手紙書きなよ!」と言われてラブレターを書いたことがある。後にも先にもラブレターなんぞこの時きりである。Tくんに渡そうとするも、彼はとてもシャイで、学年1の快足で園内を逃げ回るものだから、とうとう直接受け取ってもらえなかった。下駄箱の靴の中に入れた気がするけれど、事の結末は記憶していない。

年長に上がってからは関東から転校してきたこれまたモテ男のYくんと仲良くなり、家によく遊びに行くようになる。私の恋心はいつしか完全にYくんに向いていた。ちなみにYくんは卒園と同時に関東に帰ってしまったのだが、小学校に上がってからしばらくして、「ゆうみちゃんげんきかなぁ…と呟いています」という旨のハガキがYくん母から届き私はとても照れた。私のモテ期はあそこで終わったのかもしれない。

 

そんなこんなで小学校はTくんもYくんもいない環境で過ごした。学区の関係上、幼稚園、小、中、そのまま持ち上がらず、毎度バラバラになってしまうのだ。小学校でももちろん好きな人が取っ替え引っ替えいたが、ここは割愛(今思うとなぜあんな簡単に人を好きになれたのか思春期)。

 

中学校に上がる。私が行っていた中学校は4つの小学校から集まる少し大きい中学校だった。クラス発表を見ると、Tくんの名前が。6年越しに会う初恋の人、私は少しだけドキドキして登校した。

が、初日から卒業まで一度も彼の姿を見ることはなかった。彼は不登校になっていたのである。

不登校になる理由がある人には見えなかった。幼稚園時代と言えども本当に物腰の優しい人だったし、活発な方だったと思う。何があったのだろう。

時が経ち、担任や同じ小学校出身の友達からいろんな話を聞くようになり、その理由がわかる。

 

「お兄ちゃんもお姉ちゃんも学校に行っていないのに、なぜ僕だけ行かなきゃいけないの?」

 

これが彼が不登校になった理由らしい。

正直当時は「は?」って感じだった。理由はわからないが、彼の兄姉が不登校になっていて、それを見て「じゃあ僕も行かない」となったそうだ。そんなことが理由になるだろうか。学校は行かなきゃならんものでしょう、と。

熱心な担任だったので、たまに自宅訪問して本人と話し、ホームルームでその話をしてくれていたのだが、「背が高くてバスケが上手くてイケメンで、すごく優しい良い奴」と常々言っていた。そんな不登校おるんかい!と思いつつも、私が記憶しているTくんのままなんだなと安心した。

そんな特異な不登校だったTくんに私はとうとう会えないまま卒業し、その後も一切関わることはなく今に至っている。もしかしたらすれ違っても気付かなかっただけかもしれないが。

 

ずっと、学校は行かなきゃいけないもの、だと思っていた。もちろん義務教育の時期だし、行かなきゃいけないのは当たり前なんだけど、なんていうか「学校が世界」ではないのだ。彼はそれにいち早く気付いたのかな、とも思う。

校内の環境にマイナス要素がないのに不登校になるというのはある意味勇気が要ると思う。例えばいじめに遭っていたとしたら、学校という環境がめちゃめちゃマイナス要素だから逃げるために不登校になる、という流れは理解できる。でも、環境そのものに不満があるわけでもなく不登校になるというのは全くの別物ではないか。今だから思うことだけれど、あの年頃は「学校が世界」だった。学校のコミュニティから隔離されたら私生活もうまくいかない。そんな中で「兄姉が行かないなら僕もいかない」で登校拒否しちゃうTくんは今思うとめちゃめちゃかっこいいなと思う。あの頃の私たちが守りたかったスクールカーストなんて本当にしょうもないものだった。協調性がないとか、考えが甘いとかじゃなくて、本当は誰よりも世界の広さをわかってたのは彼な気がしてしまう。

 

今はどこで何をしているのだろう。全く見当もつかないけれど、きっと自由にのびのび生きているのではないだろうか。私の中ではもはや伝説のような存在になっている。今だからこそ、会って話してみたいなと思う。きっと生きてる角度が違う。叶うことはないのだろうけど。

 

恋心とは違った、何か特別な思い。謎を残したまま平行線の時間だけを重ねていくこの不思議な感覚、大切にして生きたい。